連載は続く~SF掌編『膨大に個性がひしめき合う・続』編



私:『ルイ・アルチュセール岩波新書市田良彦著を読み始めた。いわゆるモナド発想をアルチュセール氏は持ち込んでいる。そこには気付けた。
君:・・・・。
私:それだと・・・。ことばはそれ自体として地べた性を気付かせる。ないし感じさせる。でもそのことばに依存する仕方次第では、寂しい思いもする、ってこと。
君:・・・・・・。
私:うれしいことももちろん、あり。
君:少なくても、そのくらいは言ってくれないと、・・よ。
私:だからって、あくまでも独り言、自分さえわかればそれで、いい、と済ませることもできないわけじゃない。他人へ伝えるほんのささやかな気持ちの向きが働くような場合、わかることは複雑になってくる。そこらをバタイユ氏は明解に考えを持っていた。話が伝わり合う騒々しい中で、新聞やチラシやなんらかの伝え合いが日々繰り返されているようなイメージで良いわけだけど、その際に署名入り記事の大切な辺りも指摘も一方で可能なのだけど、もう一方で、ことばを使い合えていることの切実なところで、あたかも自分の独自な思考が生んだ貴重な考えをこそ伝えて伝わって世の役にたてられるはずだという思い込みにうっちゃりをかけて、独自性などは既知のなんらかと関わることと比べればわずかもありえない、という厳密さ感受から、だから別に謙虚ってことじゃないわけだけど、気づけたことも含めて他の誰かがやってくれてもおかしくないことの切実なことへは謙虚に、固有名をつけた言明である必要のない辺り(煎じ詰めると著作権収入にこだわらないっぽい・・そこで公務員だから発想を指摘されやすい)を言ってしまうフーコー氏の率直さなど、将来はリアルなこととして避けられそうにないことの先取り発信は今も指摘しておいて、参考になるのじゃなかろうか。
君:個々性、とどう関わる、の。
私:そうであっても!個々性は個々性として尊重し合えるように作動しているリアルにいかに感受をいつでも発動させていられるか、そこらはそういう言い方にしてしまうと、ちと弱い、かも。
君:そうよ。弱い、・・・お説教に近い方の指摘?かしら。
私:だ、よ・・・。なぜか、ゴダール氏の作品の中でも『ヌーベルバーグ』が気に入ってる。作品として是非、というのかどうかは自分でもよくわからない。太陽光が金髪にあたって眩しい、宇宙からやってきた生命の講義中の場面(そこにはアルチュセール氏にも似た役者が講師になってる)。変におもしろい、レマン湖畔のテニスかなんかのそぶり。そして斜線を描く航跡。なんなんだろう、とにかく印象に残り、それがぼーっと、茫漠そうでいて、近しくもさせる。不思議な印象的さ。そういう濃い受け止めをひきずらせてる。ヌーベルバーグでは重たい、実に重たいカメラの移動感。うっかりそういう個人的なうけとめを個人的にことばにしていて、そのことばのまま、その昔青山監督のカメラマンをしていた氏に、劇場の質問コーナーで質問してしまって、通じなかったために型どおりの答えしかもらえず、勝手にかっがりしてたからね。個人ことばなんだから、相手はわかりっこない。ふふっ。
君:アラン・ドロン・・・。
私:なぜ、どうして知ってるの、ゴダール氏のは見てる、ってわけない・・。
君:あなたがおしゃべり、だから、よ。
私:きっとこれがあるから氏の映画役者人生にもおもりっぽいのを得たんじゃないか、なんてね。港に巨大客船がしっかり錨をおろせている。そんな感じ。
君:・・よく、わからない、わ。映画見る?
私:いいねぇ、今日まで、Bérénice Bejo氏が出ている『グッドバイゴダール』をイオンシネマで見ることができる、よ。
君:この時間でも?!
私:・・でした。広告の時間を抜いて30分は過ぎてる。でも今からでもいいんじゃない?
君:私、映画、見ないもの、知ってるくせに。
私:誘っておいて、そりゃ、ないっしょ。
君:絡むの、ね。きょう。
私:きょうこ、そ、からむ、なんて・・・。
君:○○、って言いたくなった。
私:読まないで、ください。
君:なによ、急に丁寧にしたって・・・。
私:遅いけど、何か、食べに・・。
君:散歩でいいじゃない、寒くなってきて、夜の散歩、馬鹿じゃない、なんて言われそう?
私:つい、誘いづらかった、かも。
君:いいわよ、誘って、よ。
私:何か羽織ったほうが。
君:あらあなたの体温を借りることだって、できるじゃない。
私:うっ、と、まいった、率直すぎぃ。追いつかない、ぞ。
君:ジョウーダン、よ。夜、だって、他人(ひと)の目、あるの、よ。でも少しくらいなら、許す、かも、ね。
私:話が長くなってきた。
君:きょうの、あなた、おしゃべり疲れ?
私:かもしれなし、魅かれ過ぎてるのかもしれないし、よくはわからない、し・・・。
君:散歩、寒くなったら、ホットのなにか飲みましょ。そうしましょ。
私:・・・。
君:さ、散歩よ!