連載は続く~SF掌編『正月の午後のひととき』編

連載は続く~SF掌編『正月の午後のひととき』編


私:女性観を年初、ということでことばにしてみたいんだけど・・・聞いてくれる?
君:珍しい、わ、よ。聞きたい気もするし、少し、心配。
私:えっ?!
君:言い過ぎない、とか・・、でしょ?
私:お見通し?あなたにはかなわない、と言っといて、でもしゃべる。
君:止めても無駄な事、承知だし・・どうぞぉ。
私:結局、バタイユ氏を参照してるわけ。バタイユ氏がロジェ・カイヨワ氏を参照したように、参照するってのも結局、バタイユ氏を参照している。以前もふれたけど、男性・女性の区別は”グラデーション”観点に埋没してしまってどこまで意味を効果的にできるかこころもとないのが現状と見ている。けれども、確かにオンナだったりオトコだったりはする。その場合のオンナ、女、女性についてならば、女性としてとりあえず括ってなんらかをことばにできそう。そしてけれどもグラデーションにかかわる内実をたえずかすり続ける。突然に聞こえるかもしれないけれど、それに歴史的事実に沿っているかどうかはかなりいい加減なままだけど、ウィーン少年合唱団という知恵としてみたいわけ。それに対比するに、それっぽい性質で女性に歌わせたりそれが”女”性(おんなせい)において扱われようとすることの倒錯に近いことを想像してみたい。その声質(こえしつ)は女性たちを便秘に誘うだろうという想像。大衆的な量の現象としてはそちらに誘いそうだ、という話。少年合唱団はその年齢的偶然を使いこなした。そしてそれはそれとして受け止めればいい。けれども、あたかも清らかめいた、美しめいた質を仄めかせてその声質にこだわらせることの集合現象としては、女性たちにかなりのストレスをもたらす。女性も男性もないという地点が重要と振り返れる。何かしら相当に偏ったイメージに依存させるようにしてその声質をかぶせようとしている。そして心の負担は半端じゃなくなる。ただ声質に関わるよりは生活全般のからみに影響して、らしさ圧のように働く。ろくすっぽおならも出来なくなる。テンシキという落語用語で逃げることも出来そうだけど、今時、そういう噺を知っている人は少ない。大体、音が出ればバレてしまう。言い換えだけでは済まない。深夜便でこっそり言ってたけど、音をさせない技法をだから列島の女性たちの多くは小さいころから身に着け始めるらしいね。それも結局ストレス元もろじゃないか。たまたま形態における女性性のグラデーションの側に過ぎなくて由来へさかのぼれば内臓感覚の内側としてはそう性別を意識するほど違っていない。モツ肉の匂いは性別に関係ないのと似ている。お互い垢がたまり易く不潔にしがちでもあり、強いて清潔にする癖を意識する。それでいて気にしないようにして一日くらいは簡単に過ぎてしまう。腸に関する新知見が日進月歩でそんな時期だからというわけではないけれど、内臓へのストレスは様々に影響して体全体へと拡散する。一方でヒトの文化としてくくれる観念操作野での女・男というあり方についての使い分けは、身体的役割分担として狭めてしまう理解よりは文化上のやりくりにおける巧みな使い分け、分担とみなせる。そういう工夫を、グラデーションが意識できるようになってしまった世の中で、どう生かし切れるのか、改良可能なのか、っていう問題はとっくに登場してしまった。ただ、とくせのように使ってしまうけれど、列島育ちの場合、女性たちも働き者が目立つ世の中だということあって、どういった仕事の分野には性別が意識される占め方に気付けたかな、程度のことは意識しやすそうだけど、お互いにお風呂好きで良かったね、ということを一般的な形でことばにできるくらいにはリアルな性別観というかヒト観が通用してきた気がする。だから異性を意識するにはそれなりに相手の立場での工夫が工夫されてきたようにも感じる。わがままなやつらを野放しにはしてきたけどそいつらの誘いにノリにくいっぽい。例外はいくらでもあるだろうけど。こういってしまうとじゃ、その方が普通みたいな数量比較っぽい話に受け取られそうだけど。
君:なんとなくわかった、わ、よ。女性を特別扱いしない列島の秘密の話、ってこと、含まれてたでしょ。それから、そうは言っても女性は女性のふるまい方を伝え合ってきた?でしょ。それから・・・。いつからかはわからないようだけど、女性があるイメージに沿った女性っぽくふるまうように強いられることでストレス、腸に悪いストレスをこうむる?かしら。おなら、わたしだってするし、けれど、女性はより注意深くなっているから、ストレスをためやすい、って話、よ、ね。
私:そんな感じ。よく聞いててくれたんだ、アリガト。
君:不潔の話、ごくたまになら、聞けるけど、時々くらいだと、ちょっと敬遠したくなるかも、よ。
私:そぉお。参考になる、よ。そうだね。・・・・またお茶淹れようか。
君:そうね、そうして。さっぱり、普段のお茶、飲みたいかな。それとお茶菓子。
私:緑茶に合うかどうか・・チーズケーキ、焼いたばかりのがあるからそれ出そうか。
君:あら、うれしい、自分で?
私:そっ、きょう。このチーズケーキ、チーズ少し多めに用意して同じ容器で焼いた。だから厚さがいつもよりも。蜂蜜、少し足りなかったかな。
君:美味しそう、これ。
私:お茶に合う?
君:程よい、お味?かしら。厚さ、このくらいの方が食べた感じ、良い。
君、私:(お茶をすすって)ずずずぅーっ。サクサク、パクパク。ずず、ずーっ。