連載は続く~SF掌編『散歩はじめ '19(又は平31)』編




私:介護職やってると、一年というか数年間が早い早い、って感じぃ?
君:そぉお?
私:他人事っぽい。
君:だってぇ・・。
私:とにかくいつのまにかもう何年間もたって・・・。リーマンショックをさきがけとして、2011年の津波地震介護施設での緊急時の一端を体験できて、携帯端末が普及して、インターネットが当たり前に、いつのまにかなってたりして・・・。
君:といって、あなた、携帯、使ってない。
私:そっ。
君:地震の時って、どうだった?
私:やっぱ、お年寄りともなると、なのかどうか、男性でも、かなり不安げだった。だから氏を抱(かか)える感じで静まるのを待ってたよ。映像でビルが崩れるシーンを見慣れていたので、仮に崩れるとして、万が一柱に沿って身を寄せていれば身の安全に役立つのかもで、そういう位置取りくらいまではしてた、よ。
君:柱?
私:っていうかぁ・・、建物のうちよりか外よりかを崩れを察知してどちらかに移れるのかもとかついでに柱を期待できるのかとか可能性に賭けてた感じに近かった。
君:でお二人で?
私:そっ、ちょうど居室周りする時間帯でたまたま寄ってたお宅の方といっしょ、だった。
君:崩れそうに感じてたの、かしら?
私:これ以上揺れて、更に大きくなるようならめいた束の間の空想に、多分、近い。
君:なぜ、早く、って感じてしまうの、かしら?
私:今、考えたことは、以前ふれたように、年取りつつ、関心が積み重なって、やることやけに多くなってしまってて、しかも日常生活を維持していくのに欠かせない雑事を減らすわけにはいかない、ってことで、時間がもう少しあれば・・ってことの裏返しのような気もするけど、あくまでも今の思い付き。
君:年始、忙しかったの?
私:仕事。介護職って年中無休でしょ。休日あるけどさ。
君:そうね。
私:キミがもし早く仕事を終えて・・だとしても、ボク、数分は早めにいつもの所通過してたんだ。
君:なによぉ、まちぶせぇ?
私:な、わけ、ないでしょ。でも偶然会えればいいかな、なんてくらいは許してもらいたいな。
君:いいんじゃない。少し、そこ通るの早かったわけ、ね。
私:キミの車に似たのが先の方を強引に走ってた感じしたけど、時刻的にそこを走っていているはずない、でも・・。
君:でも、つい、振り返ってぇ、しまった。でしょ。
私:ふふっ。そっ。つい、ね。夢中だし。
君:えっ?!何に?
私:キミのまねして、なによ、って・・・。キミ、キミに、決まってる、・・しょ。
君:一応、聞きたかった、のよ、ね。ふふっ。
私:心は、・・・で一杯さ。
君:・・もぉ、いいわ、よ。時代、変わる、ってどういうこと、なの、かしら。
私:そうだよ、ね。ことばで一気に言ってみることはできる、よね。そういう気楽さは一方で確かに可能。でも、実際の中身がどう人間関係の中で、変化してしまうのか、ってのは本当に色々な時間が錯綜して、わかるようでわからない、というか、そう変わったことがどうってことないことで、ひたひたと実は変化して定着するような事態、ってのがありえそうだ、よな。素材がネットに載りやすくなってだれもが研究者になれる可能性っぽさ、っていう感じの情報扱い上の変化ってのもいくらかは言えそうに思いたい、よ。でそれを読む読み手次第では、研究成果を発信する手ごたえにもなりうるし、応用する方はそれとして、試す相乗が可能性に乗る。
君:また難しいことになってきてない、かしら。おしゃべり、多数派じゃない、の。
私:その昔、チャットってことばが流通してた。ネット上での書き込み式のおしゃべりの場が提供されてた。サーバーを簡単に立ち上げて複数の場も作れれば、一対一のおしゃべりにすることもできるような。でもIPアドレス公開してつながるタイプだと、いたずらとかにもあいやすかったかも。
君:暗号化とか、なかったの?
私:そこらは、その頃おおらかだったのか、ボクが油断しまくってたのか。
君:後者、ね。
私:きつぅ。でも確かに、そうだったかも。そのインターネットが今や、だから、ね。
君:その頃?いつ頃?
私:2000年になる数年前くらいだった。
君:じゃ、私、生まれてたかどうか・・・
私:それって、わかりすぎ、ない?
君:・・・だから、そのわかり易さを受け入れてぇ・・、冗談にできるでしょ。
私:それって無理あり、でしょお。
君:あら!無理、って、なによぉ。年始、よ。今。
私:今日7日で一応、区切りでしょぉ。きょう、きょう。
君:きょう、じゃいけないの?
私:怒ってる、キミ、珍しく、怒ってる・・・くっ、くっ、くっ・・。
君:ひどい、わ。・・・お茶にして、よ。散歩、しましょ。
私:その、展開、なに??!
君:きょう、きょう、って嬉しかったのよぉ、でお茶誘ってもらいたくなった、の。
私:そういう、展開。なるほどぉ。いやいや、もぉお喜んで。さ、行きましょ、今年初めてのデート、っていっちゃあ、ダメなんだなぁ・・、散歩、ね。そしてお茶して、いい気持ちになって、いいなぁ・・。
君:また空想してる。歩きましょ、歩かないと。動いて。年寄りこそ、動いて、頭に刺激を与えないと・・。
私:なって言った?早速、今年の第一号、年寄り。ご馳走様。
君:そこに、こだわるぅ・・。歩く、方になぜ、気持ちが行かない・・・。
私:そね。ごめん、うっかり。寄り添って、良い?
君:一瞬だったら。
私:一瞬、でどれくらい?
君:ダメェ。その誘いには乗らない。少しだけ、って意味、よ。ふふっ。・・散歩、行きましょ。
私:もぉ、4歩あるいたしぃ…。
君:オヤジギャグ、それも最低、の第一号、ね。私なんかもう10歩は歩いたは、よ。
私:ボクも数えて9歩来た。
君:こんなことしてたら、進まないじゃない。
私:面白くて・・・
君:(年寄りの手を握って引っ張って歩く格好。年寄りは寒さにかじかんだ格好)