連載は続く~SF掌編『冬の散歩道、その後』編



君:探偵さん、どこへ行ってしまったの、かしら・・・。
私:実は・・。
君:実は?・・。
私:寝てた。
君:インフルエンザ?季節柄・・・。
私:そぉ言いたいところ、なんだけどぉ・・、怠けてた。面倒だったみたい。
君:あなた、でしょお、探偵さんの話を作ってる・・。なによぉ。
私:いやぁ・・、年なものでぇ、時々億劫病が出てくる、わけ。
君:都合のいい、言い訳。
私:でもただ寝てたわけじゃない。
君:あら、って、でも別の怠けてた話じゃ、ないの、かしら。
私:へへぇっ。
君:なによ。気持ちわるぅ。
私:ヒトは風呂好きである。
君:ここでのこと、ね。地域限定、よ。どこでも、ってわけじゃない。
私:ありがと、そういう制約は確かに。で、わがままなやつらの欲望の方向性が見えてくるような話にできる。ヒトが風呂に入ったその時の気持ちは、非常に個々性を持つ。とにかくお付き合いでの気持ちを遥かにしのぐ。個々性においての充実感。満足感、ぽい。わがままなやつらの欲は性別、個々性に関わらず、やつらの方向性で占められがちにする。大枠の方向性が濃く働いていて、単調。それに引き換え、風呂での愉悦はいかんとも個々性に満ちている。生理的なところでは似ているかもしれないけれど、個々性において感受している。邪魔されたくないはずだし、相手云々ではない。人生の途中経過が一見ものを言ってしまうように受け取られやすい面も持つけれど、子供もその急所のところに気付ければ、子供たちだって同じような心身での受け止めが可能になる。それでも体温を下げさせるようなストレス圧経験が作用もしてそうだから、つまりはそれゆえに個々性からするある一定湯温に満足を得るような体験になる。人生要素を微妙に付け加えた方がリアルに受け取ってもらえるのかな。
君:探偵稼業を休んで、温泉に浸かってた・・なわけ、ね。
私:その心身・魂の体験のひとときというのは介護でのお年寄り諸氏が受ける、食事、排泄、もろ入浴での体験にも当然通じるはずなんだ。すると、どういう距離感でお世話できるのかが、想像しやすくなる。手前(てめえ)勝手な大仰な態度を振りまくお年より相手、という事態ではない。むしろ個々性を安心して表現できている、油断している状態で、介護、介助、お世話を得られている状態を想像したい。だからプライバシーへの細心の注意も必須と推測できる。しかも相手の必要を介護的に満たす側から、相手とのそれまでのお付き合いから察せられる必要の受け止め方の工夫がどこまで可能になっているかが、いつでも再検証されている必要を指摘できる。介助、お世話する介護担当がそこに居るようでいないような技量ができれば育っているといい、とシンプルに想定させる。達人技を見せる文楽とかの黒子そのものだ、ね。黒子は自己主張しているわけじゃないし、黒子の技が人形の演技そのもの、ということでもない。人形も確かに演じている。形を伝承することの便宜は、ある形が熟しているならば、無難な社会性を発揮させてくれる。けれども、動態に晒した時に、不適応現象を含ませやすくすることも時の移ろいとしてヒトは経験してしまう。たとえとして最善ではないかもしれないとしても、"魂”とかスピリットとかカタカナことばで伝わってくる内実のところを引き継ぐのは形にこめた先達たちの生きざま込みでないと実は伝わりにくい。ないしその形が組み込まれた話の中での形の活き方から経験を重ねる中で、気づける奴は気付ける、ということにしがちだ。わたし的には、だから風呂での愉悦、湯の悦でもいいのかなぁ・・、それはわがままなやつらにたまたま支配されてない楽しいひととき体験として持ち出したい、んだね。
君:息継ぎ、した?年なんだから、気を付けないと・・・。私も、お風呂、好きよ。シャワー浴、より。
私:わかって、もらえそぉ・・・。ど?
君:なんとなく、かしら。なんとなぁーく。
私:もう一つ、病は年寄りと密接だから、そのことも考えたぞ。
君:ぞ、って、偉ぶることもない、わよ。
私:ちょっと強調表現、ぞぉ。ぞ。でも、そうね。
君:そぉよ。
私:欧米系が育ててきた医療が対症療法で有効性を抜群に発揮することは経験からハッキリしている。なのに今でも根治を目指させている。これってヤバくない??と疑問符を二つ分くらい思ったわけ。
君:一つも二つも同じじゃない?
私:二倍、二倍は倍、だから・・。って、ボクがそう思い込みやすい、だけ、か、も・・・。とにかく、現代社会で主流の医療の力を発揮してもらうのに、そしてだからこそ現場の医師たちの自信をリアルな感受として回復してもらうためにも、赤ひげ医師の感じね、対症療法の範囲での現代医療に邁進できる指針を行政上も医療のプロフェッショナル組織においもて、早速整理して文章表現してほしいな、っていつのまにか思ってた。対症療法で体の安定性を回復させたら、後は患者自身の心身が根治に向かえる状態なのか、不可逆な過程を持ち込んでそこへも対症療法での着地点を持った治療を施すのか、など具体的に条件を示せるようにする。このことの利点は、いたずらに費用のかかる医療を医療側も患者側も求めないで済むようにすることとかがよりわかり易い。それ以上に本当は、患者の体の負担を治りの条件に近づかせると予想できる。多剤負荷とかをきっと無くせる。病院経営の在り方に変化が生じて、今のような混雑でなくてもやっていけるし、その割にマクロでの医療負担は減っている。その分、他で使える。資金循環の経路が違っただけ。サービスも含めた物品のめぐりめぐりはいつもの通り活発。経済の落ち込みにはならない。そして一人一人の心身の状態もこれまでの負担感とはおさらばしている。
君:それって探偵さん、が、考えてたの、ね。あなた、じゃ、なく・・・。
私:そ、だよ。探偵が温泉につかりながら、うとうとして考えてた、話。
君:・・・・。
私:一応、余生の探偵稼業、なわけ、よ、こいつ。だから温泉に浸かって、仕事の連絡待ちなわけ。連絡ないと、暇を持て余す。そういう老後生活。
君:お仲間たちは?話、出てこなくなってる。
私:そこはわたしが忘れてる、なんて・・・。
君:本当?うっそぉ。
私:居ることを、忘れてたかも・・くっ、くっ、くっ、くっ。
君:作者がそもそも、呑気すぎるの、ね。この話。探偵の話にならない原因、わかった気がするわゎ。
私:でもさ、偽入居者問題、しっかり観察してたから、ね。
君:言い訳、でしょ?
私:いやいや、君の刺激を得て、急展開、今、したところだから。
君:やはり・・・。困った、作者・・・。トホホ、よ。
私:で、どうもそういう入居者はいないらしい、という結論に近づいていた・・・。
君:それ、ないでしょ。そのうち、またネタが切れた時、持ち出す気・・・。
私:読まれてる・・・。
君:別に探偵じゃなくてもいい、って感じ、する。
私:いやいや、探偵。探偵じゃないと。
君:なぜ。
私:フィリップ・マーロウとかマーク・ハマーとか映画の方いくつか見てて、やっぱ面白い。探偵もの、ゴダール作品にもあるから、ね。なんとなく探偵とか刑事が出てくるだけで、面白くなる。かつてならジーン・ハックマン氏のとか、少し前だとダイ・ハードとかのブルース・ウィリス氏のとか。人によったらロング・グッドバイとかの役者とか好みがあるかもしれないけど。ぐっと昔のダーク・ボガード氏、最近になってなんとな面白く思えるようになった。
君:なんとなく、ね。なんとなく、かぁ・・・。
私:お茶、行かない?
君:再び、お上手!誘われちゃう、わ、よ。
私:おばさん年代もはしゃいでる・・・。
君:あら、お年寄りのあなたに忖度してみたの、よ、察して。
私:そういうストレス系の忖度、キミしないでしょう?!
君:わかるぅ?・・・。それより、誘ってくれたんじゃないの、お茶。
私:よぉし、散歩だ。
君:そういう力み、年寄りには良くないのよ。
私:・・・・・、今、抜いたから、ホッ、て。ね?
君:それから屋外との温度差、その状態でさっと出て、いきなり倒れる、なんてことないように。
私:きょうの、キミ、優しすぎない?
君:評論、してる。いちいち。散歩、でしょ。行きましょ。葉が落ちた大木の並木道も乙なもの、よ。