連載は続く~SF掌編『Seal氏とかSully氏とか』編




私:新し物好き、ってことだと一周以上遅れの話に近くて、なんとも・・なんだけど、ボクにとっては新鮮な体験、ということで、聞いてね。
君:ふーん、へぇーっ。
私:その反応、どいう、こと、なんてね。
君:でたぁ!なんてね。それって昔少し流行ってなかった、かしら。
私:キミらの世代に流行ってたかどうかは別として、なら、多分。
君:大丈夫?、あなた、今、これから話そうとしてる話題・・・
私:くっ・・・、逸れそう。ヤバ。なんだっけ?
君:頼りない・・・、もぉ。なによ。本当に忘れた?な、わけ、ないわよ、ね。
私:うっとり、話してるキミ、見つめちゃったりして・・・。
君:本当に、な、に、よ!よ。話に戻って。
私:・・映像、4K映像の話。長くなるかわからないけど、いい?
君:年末、よ、って、いいから、どうぞ。
私:うん、じゃ。プラズマテレビがもっとコントラストを出せるそうなんだけど、懐具合の関係で4Kを映せる有機ELモニターと4Kのプレーヤーを準備して、早速見た。そしたら・・・・。
君:もぉ、なに、よぉ・・・。もったいぶってるわけ。忙しいから・・。
私:ごめん、そんなつもりじゃないけど、ついノリを工夫したくなって。
君:それが、工夫?!それが・・。
私:とにかく見た、でその体験話。昔から映画好き、つまり日々映画館スケールの映像を見続けてるような人たちのことなんだけど、そういう人たちは、照明のこともごく普通にことばにしてたわけ。映画を見ることに馴染んでは来ていても、そういう感受ってのは、ピンと来にくかったんだよ、これまで。話としてはわかって、で、そういわれるシーンを見てそういうことなのか、なんてね、なんとなくわかった気になる程度だったんだけど、Ultra HD の画像を見た体験はそれを映画自体として味わえてしまっているのに気付けたんだよ。もう、見た瞬間にその光具合が迫ってきた。だから、そこで使われている効果がもろ観客に影響してるはず、と言って良さそう。どういった光線が当たってるかとか、角度とかそういったのがモロ感じられてしまう。それが2K blu-ray の頃はまだぼやっとしてたのが、4Kの Ultra HD になってしまうともう放置できない。作り手のやってることがモロ伝わってしまうんだ、よ。だからたとえば、室内のシーンなど、まるで舞台演出の場を撮影したっぽく感じるしかない場面もあればなんとなくどこかの部屋っぽく感じられる場合もある。ただそこらは感受の相対的な所があるから、他の場面との組み合わせ次第では、錯覚に誘えるのかもしれないけど・・、とにかくそれくらいだから、実在感というのか、リアル感というのか、そういうのをリアルに感じることができるようになっていた。たまたま飛行機の操縦席を見ることができる作品だったので、その計器の一つ一つが全体として焦点が合っている場合、それらが良く見えてしまう。そんな細かさ。8Kの時代が普通、となると、作り手たちのこれまでの蓄積が物を言ってしまう。相当な職人技のシステムが出来上がっていたはずなので、仕損じみたいなのが8Kとなると観客に気付かれてしまう可能性あり、かも。ただそういう作り方じゃない、もっとラフっぽさというか、整然としたのを目指さないやり方で、映像の効果をいかに使いこなすか、ということも、ありだけど、その場合でも、いちいちが感じられてしまうので、偶然さ、で済ませる手法もあればどうも効果として作り手にとっても観客にとっても具合が悪いかも、のようなこともモロに生じさせかねない。とにかく、4K映像に親しめるこの時期になって、映像体験はヒト感覚の肌理に働き掛けてくれるくらいに近づいた、と思えた。話はごっちゃになっちゃうんだけど、2K映像でトニー・スコット監督2001年作の『スパイ・ゲーム』をテレヴィ放送の録画しといたのを見た。その頃のトニー・スコット監督は’97年に『エネミーオブアメリカ』とかも作っていて、テレヴィ放送のドキュメンタリー映像でもCIAのやり方を客観的に報じつつあった時期と重なって、大国USの抱えてた重量級のなにがしの一端でしかないはずだけどあけすけになりだしてたんだなぁ、って今は振り返れる。テレヴィのドキュメンタリー番組でCIAが見方を変えればテロリスト集団を一から育てていることを丁寧に紹介してたんだ。USから公務員が派遣されてそこで技術、知識を提供し、育ててた。そして衛星情報、電子系の細密、微小なテクノロジー、デジタル情報処理などなどが日々革新、進化していくような時期でもあって『エネミーオブアメリカ』で紹介された一端を古臭い方ではなくて、最新の目下開発中であるかのように受け止めて面白く見ていた。それらに翻弄されるヒトのありさまを重ねながら。その監督がその何年か後に『スパイ・ゲーム』を作っていたことをこの放送録画を見て初めて知った。CIA的な諜報を担う人々の仕事についてダイジェストに紹介してた。それだけでも当時の一般にとっては貴重に思えた。今はネットでもっと多くのことを憶測混じりで知ることができるようになっている。”過激派”と公式筋から見なされている組織に属してフィクサーのような役割を末端で担っていた女性が、本人のセリフとしては、中東のある地域の中国の建物を空だと判断して爆破したけれど、実はヒトが何人か居て死なせてしまって、人生にとっての後悔にしていた。個人がどう思おうがヒトを死なせて、その被害の立場からすればとんでもないことをしでかしたとんでもない奴に過ぎないから、正体がバレれば狙われてしまうような境遇をかこっている。その女性が国際上の人質交換のような事態の材料に使われて、罪人として中国へ引き渡されてしまう。過激派人材を手を汚すことなく処理できるし、人質を解放できるしの一方にとっての好都合が働いている。そのことはともかく、諜報系としては零細企業か中小企業の予算規模かもしれないのがきっと過激派的在り方のはずだから、CIAも過激派もいざとなれば儲けやすい資金源に走ることでもごく似ていると言われているので、特にフィクサーっぽい役割だと過激派かCIAとかの公式筋かの見分けは付きにくい。万が一の場合、手法が洗練されていて予算も使える公式筋の力量を典型的に紹介してそうな『スパイ・ゲーム』じゃないか、って想像した。だからリビアをめぐる放置しっぱなしのやり方が今になって一般にも知れ渡り問題にされることは当然で当時の国務長官氏の『スパイ・ゲーム』を見てないのか?っていう疑問も生じる。カダフィ氏という怪しい在り方、フセイン氏や父の方のアサド氏の怪しい在り方に『スパイ・ゲーム』的な手が当然差し伸べられていたはずが、そうはなっていない。過激というよりは残酷に放置されてしまった感じ。その怪しさ、ということの内実を列島版のコンスピラシー知見は踏まえさせてくれるはず(つまり日本語使い諸氏にとってはいとも簡単に接近できる)。民主化、といっても本当はピンと来にくい。介護でいう自立の問題に近い。ということはヒトそれぞれの状態を察して、その状態から推して無理のない、ないし大川氏らの知見から何をしてみたいかを探れてそれに沿った自立へと促せる達人技が要る。もちろん、その希求している内実を検討することも必要になることがありうる。そうやって地道に自立を促して自らの力でできることを自らが切り開けるなんらかの助力を提供し続ける状態になれば、ちょっとの助力が相乗するようになって多くに一人の力で助力できるようになる。民主化の場合は、もっと自分たちでの相乗が引っ張る現象だから、助力とかよりは、理念的な経験則を啓蒙して、そうすると失敗が見えているとかの類を予め提供できると参考にしてもらえる。もちろん、100%の一対一対応の則ではないのだから、委ねることが大事になるけれど、理念を外れる度合を見守ることも必要な時はありうる。そして自立ということなのだから、伝統的な自立の蓄積を無視して欧米流こそとなると、漏れることが過剰になる、と結果的にわかることが19、20世紀手法では気付けている。そういった情報がこれからは4K映像質で感じ取られるようになる。そこが凄い。CGでの手直しのし易さをダヴィンチとかいうソフトの紹介ヴィデオで見て、相当に手軽にできることも知った、よ。デジタル情報だからある場面の連続の場合、どこそこをいじる、と指定してやればその部分を追って調整操作が施されてしまう。起点と終点を指定して、どの箇所にどう効果を作用させるかも指定してやれば、一連の場面に適用されてしまう。実に簡単。そんなCGが使われてしまうと、4Kの画像の効果にあいまいさが持ち込まれそうだ。リアルな現場をリアルに伝えてしまう4Kや8Kだけど、そこにCGでの調整が介在してしまうとタイムドメインスピーカが立体的再現性を発揮してくれる原理と似て、定位に(作り手は音響装置のつまみとかをいじくって厳密に定位させているつもりになっていそうだけど)厳密さよりは要素性を一気に減少させて、あいまいにしてしまう。粗いヴィデオの時期でもフィルムにこだわってフィルムで撮ったのをヴィデオにして放送してたドラマもあったと記憶してるのだけど、そういうフィルムとかの情報量を4K、8Kを扱える時期になってきっとプロフェッショナル諸氏がその貴重さに気付かれているのではないか。というか、そういう話は昔からしてたのを見聞してきた。自らも手軽に4K映像くらいは撮影して扱える時代なので、それも手軽に映せるしで、3D映像の普通化が未だであっても相当な試行錯誤の材料は手に入っていそうに思える。観念肥大系の危うい辺りに気を付けながら、限りのないその試行錯誤の先を試せないだろうか。
君:大仰、よ。ってちょっと優しくね。
私:いきなり大仰、って決めつけることばにしないでくれて、アリガタイ、よ、ほんと。つい力が入ったかも、なんてね。
君:なんてね。ふふっ。

ということで4K映像噺はつづく(のかも)。