連載は続く~ SF掌編『女子サッカー若者チームの活躍を見てきた感想』編


 広島チームの5番市瀬選手とサイドライン沿いを走る15番の藤生選手や11番の中嶋選手らの間にはそれなりの呼吸慣れを感じさせるタイミング合わせなどから感じられるシンクロ機会の積み重ねなど想像したけれど、折角の好機のはずが、パスで蹴り出されたボールはサイドラインを割る方向に走り続けるタイプのものだったりしている。
 サッカーに馴染んだ諸氏には直ぐに気づかれると素人老人は思ってしまうが、パス出しのボールにバウンドしながら減速していくタイプの回転を加えるだけででも、いくら早く走れる選手でも逃げるボールは追いきれないのに対して、減速系の丁度良いところで得られたパスは次のプレーへ入りやすくもさせる。追う相手チームの選手と競うのは走力だったりすれば、そこをほんのちょっとクリアできただけでも位置関係として背後を取った状態のままゴールに駆け込めて、もしも自チームのだれかたちが気をきかせてゴール前に押し寄せていたならば、それなりのゲーム進行に関わる圧を提供もするし、得点すら望めてしまう。
 回転系へのコントロールは100%確実にするのはちょっとぉ・・・、の場合でもややヨコ回転系にしてサイドライン側ではなく、ゴール側に逸れていくパスならば、走力で抜けて、即シュートの場面も作りやすい。市瀬選手がそこらを90%以上の確率でこなしてロングのパスを出すようになると、中央の上野選手とかの自由度に響いて、より得点機会を得られやすく出来る(つまり上野、中嶋両選手の追いつかれて圧をモロに受ける状態での脆さをちょっとしたスペースか時間的スペース提供によって状況的に克服可能になる)。
 またベレーザチームのボール奪取圧を交わすことはその勢いがついたモードの時には相当に困難とは思えるけれど、それでも、ベレーザチーム同様に、動いてパスコースを作ってもらうタイプのパス連携をこなしたシーンを後半、何度か魅せてもらえた限りで、それなりに自チーム内でのボール保持を可能にしていた。
 その先、保持したボールの状態で、つまり作戦を生々しく状況読みとともに練りながらの時間を得つつ、ゴール近くへとボールを運べる圧だけでも、ベレーザチームの一方的ボール保持圧へのオルタナティブな展開を持ち込めるようにする。
 そしてそこにロングの精度もそこそこいいのが届いてしまうことが何度か目の前で起これば、位置関係の自由度への制御をベレーザチームに与えることができそうだ。
 逆にベレーザチームはそこまで圧を感じさせる相手チームであっても、冷静にパス回しして自ボールを確保し続けて、動きが相手の陣形を自ずから崩してくれるタイプのプレースタイルを駆使しながら、最近特に目立つ、サイドライン沿いを使っての俊足の上がりとかなりの精度からのゴール前への蹴り込みによるヘディングや蹴りによるゴール狙いは、より有効に機能しそうだ。
 得点されるかも程度の精度のシュートが続けば、攻撃モード圧は、相手チームの冷静なボール回しのゆとりを削(そ)げる。ボールを奪われて速攻での変幻自在連係プレイと対峙させられかねない、という心にも動作連携にも響く影響を相手チームは蒙ることになる。
 バラエティに富んだ足技を基礎に、パス連係プレイの巧みもこなすチームならではの、通常の展開が可能になる。
 ただし、いつでもお互いの動きの癖を知り合える関係動作が要るし、シグナルを発信しあえて、時に各位置から声掛けをエコーさせて、相手チームにとっては数々の声の発信源にどの位置の選手が受けてなの?!と戸惑わせることすら手法にできてしまうが、そうやって相手チームが試合中の慣れからボールをあやつる選手への圧の加え方を上手にこなすようになって追い詰められがちな状態でも、そのシグナル発信によってか、素早く動き回る活発さ、持久力などが相乗している限りで、いつでもギリギリパスコースを提供しあえて、ベレーザチームのパス連携技=ボール保持状態が継続可能になる。
 ここらは率直に、止まってパスを待つタイプのパス回しは観客を飽(あ)きさせるけれど、ベレーザタイプの動いてその幾何の変幻自在さは見ていて飽きさせないというか面白くて引き込まれるタイプだ。
 どの数度にもう一回か二回ボールがつながる過程がシュートチャンスをうかがう積極性の下での動態であれば、うおぉーっっ!!タイプの驚きと感動系の情動を観客に生じさせる。
 この日の試合の引き出しパタンは素人老人のあくまでも憶測だけど、藤野選手への配球後の見せ場を期待するタイプだったように受け取れた。
 得点には宮川選手負傷の後を受けて途中出場した岩崎選手の巧みなつなぎパスが適切なその後の各選手の反応を誘ったのだけれど、そのきっかけとなるパスも藤野選手だった。
 見せ場としては、この時もそうだったけれど、ボール保持のための相手チーム選手との体接触を解した巧み、工夫だった。フェイントも観客をわかせていたけれど、足腰がかなりしっかりしてきていて、簡単には渡さないよの動作からする意思表示のようなのを感じさせた。
 ただし持ちすぎは禁物なことは今時のプロサッカーだから言うまでもない。取られるようなシーンを演じるような時には、相手チームにとっては設計された得点のためのプロセス始動となって、非常に自チームにとっては危ないし、急いで対処しないとまずいしの大変なことにしがちにする。
 全体の状況を見るプレーヤーの中で自チームの他の選手たちの技を引き出して連携の巧みへと誘う発想の持ち主タイプの場合、自身が最もやりたいことをとりあえず棚上げして他の選手たちの熟知した動作くせ他を引き出すボールだしとか動作をして、いつのまにか連携の相乗状態となってシュート、ゴール!!のようなことが精度よく起こってしまう。
 そういう他への配慮が行き届くプレースタイルをこの日の藤野選手は披露していた感じだ。もちろん、自身が出番となるシチュエーションだったら即シュートしていたと思える。
 つまり木下選手もそれほど目だって正確なパス出しのようなシーンをつくる様なことは無かったし、山本選手がパス連携に絡むワンタッチタイプでの受け渡しからゴール攻めというシーンも演出されなかったし、池上選手のお馴染みの典型的シーンも無かったし、一種(セットプレー上の)単発的なヘディングシュートのシーンが散発的に生じていた。
 一方で、相手チーム広島チームの上野選手、中嶋選手らと似て氏にとってのスペースさえあれば巧みな感知機能を働かせて精度よくシュートを放つ北村選手へそういう位置関係を察知した藤野選手がすかさずパスを出して得点となっている。
 二点目の鈴木選手の突込みまでイメージしていたとは思えないが、少なくとも岩崎選手のペナルティエリア近辺での巧みを期待してのパス出しは見事に得点として返ってきている。
 試合毎にフィーチャーされる選手が違ってくるのかなんなのか、そこらも期待しつつ、チームとしてのパス連携の巧みの変化とか熟成のあたりを追ってみたい。
 WEリーグの試合ということでは、少なくともベレーザチームのボール奪取圧をかわせるようになると(今時の各国の強いチームは最低でもそう来るから。つまり試合での勝ち負けをはるかに越えた値打ち有り、だ)、残るは相手チームに怪我をさせかねない荒業をも辞さないワイルド(ワールドカップではUSチーム選手を本気で怒らせた)なヨーロッパのクラブ系チームで育った女子サッカー選手たちで構成される代表チームとの客席が埋まって立見席も必要くらいの興行試合で、怪我しないでその圧をかわす工夫(合気道や柔道の受身や寝技(乱闘動作にならない締め技へ持ち込む瞬間技)を習得しておくとか)を育てられれば各国の観客をわかせられるチームとの興行効果も含む面白い試合を各地でこなすか世界のすご技選手が集ってくるWEリーグ各チームに近づく。