連載は続く~ SF 掌編『世界中のU-17世代はすご技揃いだ』編


 スペインチーム18番の選手が9番の選手へややミドル目の空中を過(よ)ぎるパス。
 それが二点目となってしまった。
 点差とか勝敗のことはともかく、そこでのプレーは、女子だろうと男子だろうと、参考にできそうだ、と思えるのは(既知のこととして整理済みのサッカー愛好者諸氏と対比して)素人老人だからか、それとも素材提供のちょっぴり版程度にはなってくれるのか。
 軽くパスを得た18番選手はのらりくらりとしつつ視野だけは活性させていた。
 18番選手の(眼球経由の反射光)眼光が届いたのか、スペインチーム9番選手は、9番に背を向けつつ振り返って視野に置くしかない日本チーム4番の選手の方へ交替しながら回り込むように接近して前へ出る。その間、9番選手を先の4番選手とともにはさむ形にしていた日本チームの5番選手は視野には置きつつ、9番選手が回り込む形で後退して5番に近いところから離れていく形勢に、惰性の進行方向を保つ状態で応じている。
 この9番選手の動きは、視野に入れたマークする選手の錯覚を誘う動作と見なせそうだ。つまりサッカー技にとしては定番と察する。
 しかし、まんまとやってのけている。
 この18番→9番のパスが成就する以前に、18番選手もちんたらムード作戦を効果的に使っている。
 そのちょっと前まで、ゴール周辺ではうるさくボールに食らいつこうと動き回っていた日本チーム11番選手が、その時には、実に淡白に流している。更にちょっと先の二人の選手も流している。
 緩急使い分けという定番を一気に発揮して18番選手は、2022女子ワールドカップでの宮澤選手の動きにプラスαした動作で動き出した9番選手めがけて、藤野選手が放ったゴロの曲がって落ち着くタイプのパスを蹴り出した。4番、5番選手は一歩遅れて追う形勢となっていた。
 ちなみに番号ではなく各選手を紹介(敬称略)
 スペインチーム
 18番 Quim Junyent '07生 (FCバルセロナ U18所属)
  9番  Marc Guiu   '06生 (FCバルセロナ・フベニールA (U19))

 放送でも言っていたかもしれないが、FCバルセロナ揃いのスペインチームという特色は見逃せない。

 実は、やはり放送で指摘されていたけれど、細かいところでの連携と関わるミスが目立つものの、日本チーム各選手個々の技はスペインチーム各選手と比べて見劣りする性質のものではない。
 ただぎくしゃくが目立ってしまう。
 なぜかは簡単で、連繋プレーを可能にする場数こなしが出来ていないことだった。
 ここらは代表チーム特有のことになるらしいけれど、そこを克服できない蹴れば、ゲームそのものの質と追々関わってきたことが表に出やすくなってしまいそうだ(各国チームに関して)。
 そこをスペインチームは暫定的に同じクラブ(の中の所属の違いはありそうだが)所属を多めに採用して試行錯誤しているようだ。そしてパス回しの呼吸あわせの辺りは、単に一人二人の関係性ではなく、ムード作りする複数のからみまでやってのけている。
 ただし、同じ手をすご技チーム揃いのワールドカップの類では使いまわし難(にく)い。
 そうは言っても、女子、ベレーザチームが同様にやってのけるタイプの一点目の仕掛け同様、2点目の手法も、応用が効きそうに素人老人には思えた。
 男子U-17のすぐ先でか、年代違いクラスになった頃に、応用してもきっと上手くいきそうだ。

 老人体力に合わせた程度なのだけど、積極的にできるだけ生な女子サッカーの舞台に接するようにしてみた。
 そこで気づけたのは、今現役の昔のスター選手諸氏は静的な技の発揮では相当に堅実な技をお持ちらしいことだった。
 試合の中で相手チーム選手が複数絡んでごちゃごちゃになりそうなとき(なってしまえばだれもが困惑する)、そこを足技で切り抜けることを一回目はこなせても、二回、三回という粘りは難しそうだ。またそう追い込まれて出すパスの精度がいまいちの辺りは何度かふれてきた。
 ちょっとだけでも余裕のある位置関係ならば、それはそれはで精度の良いパスを出してくれる。
 でも試合中の生々しさは、ここぞという好機に限って、忙(せわ)しない状況としがちにする。
 現実的な選手構成での実際のゲームでは、だから、その場その場での合図かなにかを発信し合って、パス、ドリブルを混ぜて相手チーム選手を抜く感じからの精度良いパスを欲しい状況ならば、2022年U-20世代以下の選手達にその役をこなさせ、日頃の練習で繰り返した、動いてそこへいくその場所へパス出しするよう誘いつつ、自らがそこへ走りこんで、更に瞬時の次の動作をボールへ加える。それがシュートだったり、点を狙うだれかへのパスだったりが可能になる。
 或いは、自らは瞬間得た落ち着いた状態ゆえ正確なパスを出せると判断して、圧のかかる状況でも足技を巧みにこなす若い世代に点取りを任せる格好でパスを出す、ということも色々な場面で可能になる。
 トラップの落ち着かせ方がどうしてもちょっとだけ余分にしがちだし、圧がかかった状況でのドリブル突破はいまいち、というややベテランか中堅あたりの選手諸氏だったら、その間の部分を若手選手に委ねて、おいしいところをいただく、という手もやはり色々な場面で使いこなせそうだ。
 FW役の若手にそれを何度も任せるわけにはいかないだろうから、MFとかDF役の若手にまかせる。ちらっと合図して、走りこむ、するとボールがしっかり届く、後は、自分次第だ。
 圧が加わりだして、パス出しにしろ、ドリブルにしろ不安定になりかねない自身を振り返る暇も無いから、そうなる前に、パスとかシュートとかの判断をする。慌てる前だから狙いはしっかりしている。そこらは中堅、ややベテランならではだ。
 ここらは若手が少々、中堅、ややを含むベテラン選手が多くのポジションを担うチームに可能な一つと察する。

 若手主体のチーム、たとえば先日見ることのできた大阪ヤンマーレディースチームの場合、アウェーの試合ということで遠慮していたはずもないけれど、いかにもストライカータイプとして動き回る矢形選手をおとり役にも主役にも使いこなすことに淡白だったように見えた。
 やや遠めにこぼれてきたボールをかすって外すタイプのシュートを披露した百濃選手の場面もあったけれど、中々、攻め切れていない。
 大宮のベントスチームは、確かに、実は凄い実力のベテラン揃いのチームで静的な状況をたとえ瞬間でも確保してプレーを続けられれば、堅実にゲームを支配してしまうタイプのチームだ。
 ただ今時のゲームはボールを急ぎ取りにくる試合運びをするチームが多そうだから、静的状況を作ろうにもなかなか難しそうだ。
 それでも、相手の圧が疲れだったりで、落ちると、パス回しの実力発揮で、ボール支配継続中すらやってのける。その先に、なんらか応用力を発揮できるようならば、手ごわいチームその一間違いなしだ。
 若手大勢のヤンマーレディースチームはずっと淡白な状態で、パス回ししつつ仕掛ける形にもっていき損ねていた。パス精度、トラップの精度など身につけた若者達に敵なしのはずが、ボール支配がいまいちの状態に陥っていた感じで、仕掛けイメージとかプランとかの準備不足だったのか。
 だからか、一人脇阪選手が激しく圧の役をこなしていた。

 他のチーム間の試合ハイライトなど見ての感想になるけれど、
 パス一本で、たまたまシュート、得点、という経験をしてしまうと、多少パスやトラップが上手ではなくても、そちらの手を使えば勝てるとか安直な方に仮りに流れてしまうと、ボール支配こそが点に通じるという基本を置き去りにしてしまう。
 パス一本で・・・の手法はたとえば男子U-17のスペインチームのようにパス上手、トラップ上手だからこそ可能になるし、それ以上に状況を見る観察眼も揃って各選手が持ち合わせている。

 少し力が落ちるからといって、ボールを支配できている間は点を取られないし、むしろ点を取る機会を持っている最中ということだ。
 負けが続くとか、勝って、負けて、だ・・とか残念がっている暇はない。
 ボール支配できるとサッカーは楽しくなる。
 そうやって、各チームそれぞれのポジションを得意とする選手が構成している。
 シュートが得意な選手へ工夫して配球する。すると自ずからシュートを決める。
 圧におされて仕方なしのパスでシュートお願いタイプではない、工夫を込めて、ゲームをつくるようにできれば、強弱とかとは違ったゲーム展開はいつでもいくらでも可能になってくれそうだ。

 沢山のチームの試合を生な現場として観戦できて、個々のチームの工夫の辺り、可能性の辺りを具体的にふれられるほど、各選手の名前を覚えられるようになるか、それ次第ということで、今回はここまで。