連載は続く~SF掌編『ネット通販花盛り』編

 

探偵氏のぼやきが、たまたまぼくの耳に、入ったわけさ。

君:なに、よ・・・。

施設生活の身、世間からは遠ざかり勝ちって、こと。テレヴィショッピングと洒落こんで(かなり古びた語彙なのに普通の会話に載せて使っている)、偶然もぐうぜん、知ったね。増税前のなんたらかんたら、とか。なになに、増税!だと・・・。で8%から10%になるとかの噂がネットゆえ目に入った。8%だったところへ2%だから・・こりゃ派手だぜ!!、25%分の追加料金だ、レジで。おいおい、大丈夫かよ、と年寄りということではあんたと同様だから、とにかく心配したさ、世間をきっと騒がせる。レジでの実感覚は25%余分に持って行かれるのと同様だ。
ところが、ネットショッピングが先行して増税を謳(うた)っているくらい、税の免除になる商品分類とかも事前に公表されていたり、増税が必ず起こる、のムードが相当に濃く世間に漂い始めている感じだ。否、自分が知らないだけで、もう既に、かなり浸透済なのかもしれない。それにしても25%分の税分という余計を人々は果たして、安易に流せるのかどうか。とはいえ、これだけ事前の宣伝が広まっているということは、その心配はないのかな。2%という数字ですんなり流されるのか、な。ありえない。8%の25%に当たる2%が更に上乗せされるのだ、レジ通過の時、実感はそういう重さとして脳裏をよぎるはずだ。といって、初めての消費税の頃のような圧を感じることはない。ただし、慣れた頭で、ずしんと来る。だから世の中、しばらくの間、心の方から騒々しくというか、なにか変だと落ち着かない趨勢が生じてくる、と探偵勘は読む。そこを事前アピールがどこまで解消させるのか、だ。それに恥ずかしいことにこの地の消費税は脱税とか逃げ去りやすい税のしくみが温存されたままじゃなかったか。関係種間の相互の圧が機能すれば、そうはならないはずだ、と官の方は見なしたがる。実際には、損なくじを引く立場を感受する社会的な位置が想定出来たり、ちゃっかり脱税のようなことが生じやすい。実際の納税予想額との差なんてのはしっかり計算して公表されるのかな。老人に入ったところの探偵稼業、ゆえ、納税して少しは老後を安心した、ってのはある、わな。だったらしっかり税制を整えて、しっかり収税してもらって、それをしっかり(連続二度目の使用だ)老後の生活安定のために使ってもらいたい、よ。ところが、そこらは今の状態だと、・・・。

君:探偵さん、施設生活に満足されてるのかしら?それとも本音は自宅派?
私:どうかな?いい加減そうだから、きっと施設で介護の目的なんかしらない御仁だし、面倒見てもらるぞ、なんて安易なこと考えてるんじゃない?
君:そうかしら。

折角税率の話題を持ち出してるのに、結局高齢者の施設のことかい?!少しは視野を広げるってことができないのかね。つまらんやつらだ。

私:探偵氏、かなり口悪そぉ・・・。
君:言わしときなさい、よ。ニュースで、増税前の買い物の賑わい、とか、見たわ。それを増税後にしたら、確かに、探偵さんが言ってた25%分の上乗せを実体験できる、わけよ。
私:探偵氏もかなり通販で買いこんでたような・・・。

君らのような鈍感な連中には気付けないようだ、な。老後の無収入、探偵稼業やってるわけだから、年間100%無収入ってわけじゃないよ、でもね。臨時収入程度だ。となるとだな、物は稼げるうちに買うしかない、っていう実際的問題を意識できるわけさ。時間は持て余すくらいできるとしても、そこで使えるお金の量は、稼げている時のようなわけにはいかない。だから増税前だろうが増税後だろうが、買う、買っておくんだ。色々。臨時収入すら追々稼げなくなる。その時に備える。ここまで話せば、少しはあんたらだって気付くだろう、よ。

君:高いところから言ってる感じだけど、中身、参考にはなるわ。同じ年寄りのあなたなら尚更、じゃない?の。
私:ここで何度か、言ってない。年寄り。
君:あら、言ってる?かしら。
私:ともかく、確かに・・だよな。年金はもらえても働いて給料として得られる額にはかなわない。
君:では、あなたも買いそろえるとか、そういうことしてるわけ?
私:・・・、その話、お茶、しながら、どぉ?
君:あら、ちゃっかり。でも、付き合う、わ、よ。ふふっ。