連載は続く~ SF 掌編『所轄刑事が見回り中に使いこなす技は冴(さ)える』編


 列島の史実に近いところでは、たとえ"ひょっとしたらこれからも怨念ノリから乱暴狼藉をやりかねない"権力に近い人々の群れであっても、包摂して全体で中央集権プロジェクトに望み続けている。
 そこで時に藤原氏と関連した秀吉氏のようなことも起こる。
 しかしなぜそういうことに仏に目覚めた列島中枢がそういうことに誘われ易い面を持ったかの軸は判明していたわけだ。
 歴史的時間が、伝承にその軸に急所を忘れさせてしまった可能性もなきにしもあらず。
 しかし現代史をつむげる今時においては、その原因を言い訳に対外的な乱暴狼藉を簡単に認めるような権力に近い人脈は余程希薄と素人老人ですら想起する。

 ところで、刑事事件ドラマを見すぎている老人ゆえ、昔の名コンビ演じる、と評判だったらしい『所轄刑事』シリーズもちゃっかり見ている。
 一方はやけに生真面目でまっすぐなヤツゆえに、周りが見えていない。刑事を目指すがそれだとちょっと・・・という役柄。
 もう一方は、見回り中にも顔なじみの商店のおばさん、おじさんから売り物である食べ物をちゃっかりいただいてしまうというトンでもタイプの現役刑事。
 トンでもな一方で、犯罪に至らせない使命を警察部門は持つのだの信念を実践することに余念はない。
 ということで、主に万引きのたぐいだけど、巷を買い食いならぬもらい食いしている最中、ちらっと相棒にも気づかれない目配りから、若者たちのうっかり気移りの動作をわずかでも見逃さない。
 お友達と「もらっちゃおうか・・」ノリで、商品に手を出す。すかさず、ふと寄っただけのお客風からことばとしては、相棒に向かって「俺たち警察なぁっ、事件を起こさないようにすることが大事なんだよ、な」とか大き目の声で言う。
 それを聞いたごく近くの若者たちは、手を引っ込め、未然の状態で、そそくさとそこを去る。
 未然に防げることは確かに大事だ。でもそこには相当に工夫を読み取れる。
 未然の状態は、若者たちの判断がそうさせた、という形になるように、刑事氏は振舞っている。(各意識の線が交差・接触しない技の一種)
 それは悪いことだ、と他人が言われて、その圧も一つの理由として、未然の行いにできることと、ヤバイ!とか瞬間考えたかもしれないけれど、それでも自らの判断において、止めて、もしもそのきっかけが持続性を持たせるようなことにもなれば、警察の仕事は減ってしまうかもしれないが、それは世の中にとっては不都合ではない。
 とは言え、この刑事氏、番組の終了間際、事件解決か、というところで、犯人の言い訳にお説教するのがパタンだ。
 犯人からすればそれなりに追い込まれたわけがあるとどうしても言いたい。けれども、刑事氏はそういうことばを許さない。だからって他人の命を奪うことは絶対にいけないことだ。と強調する。そこは裁きを得た上で償いなさい、と言う。
 それらはもっともなことだし、情動を揺さぶるセリフ運び、演じ方の見せ場になっている。
 ただ見すぎてきた老人にとっては、くどいし、一発ものに映る。先の折角の工夫は跡形もない。
 二度目にまたこの場面を、折角の解決の場面であっても、見るのは辛(つら)い。
 映像媒体商売からしても、先の工夫技は、さらっと流せるし、凄さを感じられるし、何度でも多分見て流せる。
 でも最後のシーンとなると、どうも、何度も見たくなくなる方で作用するように思えるのだが、いかがだろう。

 残党をも包摂して、所轄刑事氏の工夫タイプの目配りも働かせて、これからは、対外的な暴走を内部の工夫できっと抑制できるようにしている以上に、既に考えを改められる発想を心身に伝承可能にしているかもしれない、そう思いたい。