連載は続く~ SF掌編『ワールドカップ女子サッカートーナメント観戦中その6』編


 純化圧が体の使い方、考える向きなどにも作用させがちにすることにおいて、似た者同士の試合ということで、実にガチンコ、がっぷりと競えた試合となって、終盤、試合が激しく動いた。
 そこらの活躍の様は見るべしの質量保証付きのはずなので、是非、FIFA+の録画版をご覧いただくとして、悔やまれるのがなでしこチーム。
 もしも残っていたら、この日の試合での組み合わせに入っていたのだ。

 少し遡(さかのぼ)ってもらいたい。
 8月の11日の試合。
 時刻はNHKBS録画放送版画面の左上段隅のゲームとシンクロさせた時刻表示。
 その61分当たり以降を話題にしてみたい。
 そこらに触れる前に、(選手諸氏においても視聴者諸氏においても)わかりきったことに属するとは察するけれど素人老人的には確かめて置けるのも貴重かということで少々。
 ワールドな舞台でワールドな面子が集まって、ワールドな技を競い合える試合に参加できるし、そうしている選手諸氏については、頑張る姿こそがちやほやされるとかの対象では既にない、ことが一つ。
 密かな階層構造が控えていて、忖度(そんたく)の類が先輩後輩とかの関係において実質必要になっているとかタイプの自分は頑張っている、のその姿を示しておくことも処世上欠かせないとかの場を既に逸脱しているのがワールドな場で試合をできる環境にいる諸氏と押さえて置けそうだ。
 そうはいっても、選手諸氏それぞれに持ち味があって、それをお互いある程度知り尽くしていない状態で試合の中、それぞれが勝手に表現したら、試合の進行よりも混乱を招きかねない。
 すると遠慮が働いて、若さの層準でそれぞれが遠慮を働かせて思い切ったサッカーアイデアや技を表現し損ねてしまう可能性を想像できそうに思える。
 けれども、そうだとしてもワールドな場ではむしろお互いの理解し合いの下、それぞれの持ち味をフルに自在に出し合えて、それが相乗してくれる方法を探る方がファン諸氏にとっては垂涎のなんとかに近づきそうにも素人老人からは思える。
 いかにも頑張ってます表現は無用だけど、持てる持ち味は惜しまず出すし、相互連携として機能させる工夫の辺りも技の一つとして表現できるといい。

 61:30頃 左のゴール寄りのラインから遠藤選手がスローイン
      宮澤選手が受けて長谷川選手へパス
      長谷川選手はゴール前に浮き球を放つ。
      それをスウェーデンチームの選手がヘディングで右サイドへ流す。
 61:45頃 藤野選手が流れてきたボールを拾い、瞬間パス先を探る。
      先の長谷川選手がやや左より、長野選手が右よりの位置にいてそれぞれがマークする選手たちからは直ぐに踏み込めないくらいの距離にいる。
      直ぐに藤野選手は長野選手へパスを出す。
 61:49頃 長野選手はパスを受けてすぐに身をかわしつつ、長谷川選手へアイコンタクトしつつ即パスを出し迫った相手選手を抜きにかかる動作を長谷川選手が明確に認識できるような動作として演じる
      パスを受けた長谷川選手はその動きに即反応してワンタッチで抜いた位置の長野選手へパスを渡し返す。
 61:52頃 長野選手はアイデア通りに返ってきたボールを見事なトラップとすかさずの相手の動作に応じたそこを抜くパス質を意図してコントロールされたパスを清水選手へ出す。
      清水選手が、早業の連続パスから得たボールは、相手チームの圧と適度に距離を保てたところで得られ、しかもゴール前には、清水選手の位置からして手前に植木選手、その先に宮澤選手がしっかりマークされた圧の中でボールを待っている。
      瞬間のことだが、植木選手、宮澤選手が動く、清水選手は遠い方の宮澤選手に向けて少しだけ長めのパスをこの時は放った。
      あくまでも録画を見直しての話になるけれど、手前の植木選手に出した場合は、植木選手が相手選手の前に瞬間出ることができていたので、ゴール前のもう一波乱くらいは起こせていた可能性を、もしも話として触れた。

 ワールドクラスの面子構成では、パス精度に限っても9割から約10割といった感じで受け渡ししている。
 疲れたり、精度が落ちると必ず形勢に影響する様は、ワールドな試合の弱小チームも混じるグループ総当たりのゲームなどではよく見かけるし、ワールドな質のトーナメントでも決勝に近づいてくるとどうしても疲労がたまってその手の粗さが目立ち始める。
 今のなでしこチームの2022年U-20世代ではない選手諸氏については、多くが良くて8割から9割の精度で、だからせっかく得たボールをたった一度のパス出しで奪われてしまうなんていうシーンも目立っていた。
 巧みなパス捌きを見せてくれた長野選手からして、意外にトラップミスのような凡ミスをしている。ストンと止めきれないからシュートだってできないし、ワンタッチパスだってできない。その時は、相手にそのボールを奪われていた。
 アイデアも同じチームの相手をアイコンタクトほかを使って引き込んでパス展開の中、最終的な展開は頼んだよの段取りまで用意してしまえるのに、それがいつも同じ質で繰り出せない。多分、長野選手に限らないけれど、技の質量は、現に見せてくれることを平静心と普段の集中力状態ならなんなくこなせる力量の持ち主諸氏にも関わらず、凡ミスを犯し勝ちなため、スウェーデンチームのようなミスの少ないチームとの試合では、それが仇(あだ)となって、まったくこうこうしたかったのにぃ・・の10分の1もできない試合にしてしまったり。

 今夕のスペインチームとスウェーデンチームとの試合でも、主審はボールを追いかけている同士の間で片方が体重をかけてもう一方を押し倒すようなことがあっても反則にしていない。体の大きい方が、受け身とその力返しの術(相手の押す圧がそのまま押す相手自らのその方向への転倒なりバランス崩しに直結する(よけたい側の)身の交わし方)を応用しない限りで、圧倒的に有利に試合が動いてしまいがちにする。
 そういう圧には2022年U-20世代は弱体だった。でもワールドな大人年代構成のチームと体をぶつけ合って、多分、体自体が反応して、それなりに耐性のなんらかを感じるか得るかしてそうに素人老人的には想像もしている
 そのU-20世代選手チームは、ワンタッチほかの工夫を使いこなしてパス回しの変幻によってゴール近くまで何度もボールを運んでいた実際が多くを語ってくれる。

 61分以降の連携をさりげない一本のパスが長野選手のアイデアを刺激して一気のボール回しを可能にしている。
 やればできる。けれども、それが何度も同じ質でできないボールコントロールの精度のばらつきを旧世代はどうしても吹っ切れていない。
 ゴール前のシュート精度についてなら、狙い方が絞り切れていない頃の浜野選手の場外ホームランシュートのことを指摘してU-20世代とて完ぺきではない、とか言っておけそうだけど、その後も当時の粗さのままなのかどうなのか、検証できるシチュエーションは今回のワールドな場では成立していなかった用意察する。
 U-20世代の実力はその選手たちが連携したときに発揮される。
 圧のことは素人流の対策とともに、実情を素人なりに押さえてきた。
 U-20世代のパス回しに追従できるパスやトラップやの精度の持ち主で、走力もそれなりの少しだけ年寄な選手諸氏が集ってくれるだけでも、同じ型にハマらないチーム構成の相乗を生めそうではないかとか素人老人的空想だ。
 ワールドな試合で優勝経験もおありのベテラン現役選手はかつてはフォワードもなさっていて今は後方を任されている。或る試合をテレビで見た限りでも、自らが攻撃する身体を操ってきたのだから相手選手の動作についてもかなり読めてしまう強みを発揮されていたし、旧世代だとしても前の方ではドリブル突破はやりたくなくてもその機会だらけだから、ボール扱い上の競り合いでの慌てぶりも後方専門選手諸氏よりは落ち着いて対処しているように素人老人からは見えた。
 それくらい、ワールドな場で活躍する各国チームの選手諸氏の後方担当だから慌ててしまうだろう現象は滅多にお目にかかれるものではない。
 U-20世代チーム構成においても、後方選手諸氏が慌(あわ)てなくて済むための前方や中盤を担う選手諸氏と同様のボールを操って抜けるタイプの熟練を経られるトレーニングも欠かせないのではと素人老人的には考えたくなる。
 男子チームにも言えることだけど、キーパー担当選手諸氏については、半端な(形の、距離の)クリアは間違ってもしない身体の可能性追求トレーニングが要る。
 ワールドな場での女子の試合でさえ、空きをいつも見定めて、どうしてもパンチ逃れしかないにしても、空きへ狙えるとか、即反撃機会到来で、守備陣がうろたえてしまいかねない瞬間を遠ざけて置ける工夫を瞬間技にできている。

 U-20世代のスペインチームで活躍したPalalluelo選手は途中出場で2点取った。
 なでしこの藤野選手はいつもの冷徹さをうっちゃったおかげで、多分、5,6点は取り損なっている。状況がどうあれ、ワールドな試合に参加できる選手諸氏は、そういう内に秘めた熱さと冷静、沈着な精度のプレーがいっしょでないと、ファンを満足させられない。