連載は続く~SF掌編『彼岸の頃、春の色も濃く』編




頭寒足熱は一定の猶予を提供してくれそうだ。無理すると体に変化が生じ、たとえば平熱が35℃台になりがちにする。そしてこの水準は生活習慣病範疇での病形のなんらかをそのうちに引き受ける可能性くらいは生じさせる。その際、頭寒足熱を心がけてきた諸氏においては、猶予というか、軌道修正の試みが成功しやすくなるくらいの期間的な余裕をとりあえず得ているような状態になっている。無理のままならそういう試行錯誤の為の時間すら取れていないはずなので、一応のゆとりを得ている、とも見なせる。それと並行して、恐らく栄養分の補給も必要になっていそうだ。どういう状態の時、どんな栄養素がより消耗してしまうのかなどから日ごろの摂取では足りなくて、体での修正が効きにくくなるとかが生じてしまいそうだ。或いは各栄養素間のバランスが悪くて作用上不都合が生じてしまう、といこともありそうだ。先の認知症仮説からすると、細胞の再生上の不都合が生じている、とかの場合、ストレスが起点になっているとして、ではどういう脈絡からそれ(細胞が再生しづらい)へと至るのか。
現象的にはとにかく生活習慣病範疇の体調不調をかこったお年寄り諸氏においては足の方の温める志向を欠く方々がとにかく目立つと指摘できそうだ。寒い寒いとその代わりに上半身を厚着しがちにする。お年寄りにも伝統知継承系と近代啓蒙の試行錯誤にさらされてきた諸氏がまじりあっている様、と見なせそうだ。同じ年よりじみた頑固を表現するにしても好都合な傾向と不都合な傾向に分かれてしまう。
半身浴が頭寒足熱についての検証材料になる。長く浸かっていられる、ということも半身浴ならでは、だけれど、少々寒い風呂場であったとして、下半身が湯に浸かると、上半身の肌寒さが堪(こた)えない。もちろん、長風呂や半身浴が可能な体調の人々ができる、という制約を指摘することも大事だ。中には長風呂や半身浴が体調に無理な諸氏もいるはずだから。
体温の体内的伝わりというか保持の経路めいたイメージが湧きやすい。エネルギー食いの頭だから当然発熱量もバカにならない、ということも一つあるだろうけれど、だからって体まで温まり感が頭経由で、ということはピンとこない。上半身が湯から出ているのに、下半身が使っているだけで、少し長めの入浴によって汗ばむほどになることを簡単に経験できる。部屋のエアコンは余程の工夫を施さないと上半分だけやたらと温めてしまいがちにする。人によってはやけにに上気しやすいなとか自覚できる。たばこの煙が充満している狭い部屋での身体感覚にもいくらか似てそうだ。で足もとに手を伸ばせば冷っとする。だから頭はボォォッとして、その割に体の動きが温まって快調に動きやすくなっているということにはなっていないことに気付けたりする。

ところで、以前、触れたことがあったけれど、家庭ガス(とりわけ湯沸かし器経路)とかが燃えて出る燃焼系の空気に花粉症状臓器は反応しやすい。成分からか、熱せられた状態からか、とか絞り込み方に工夫が要りそうだけどそこは放置してしまう。
1970年代に顕著になった花粉症候群。その謎を解けるどなたかは、未だ、ということか。





君:探偵さん、どうなの、よ。それ、解いちゃえば。
私:だから、人任せにしたいくらい、わかりにくいって・・。
君:なによ、あなた、のことじゃなくて、探偵さんに聞いてるの、よ。
私:探偵もキミに似て、忙しいらしい・・・。
君:それって、話にする気、無いってことじゃない。それ、ダメ、よ。
私:確かに。率直には、手抜き、だよな。どうしましょ。
君:頼りない。探偵事務所のスタッフには専門家、といっても引退後のご老人方?がいらしたのではなかったかしら。
私:確かに。
君:大丈夫、かしら。って私が心配することじゃない、だろう、し。もぉ。
私:頭を冷やそうか・・・。
君:使って熱くなっている、わけないでしょぉ・・・・。使ってないもの、あなた。
私:?
君:つまり、あなたが考えて、想像してできてくる探偵さん、ね。その探偵も頭を使って熱くなる、わけ、でしょ、頭、が。
私:やっぱ、ボクが考えるより、キミに作ってもらいたくなる、よ、探偵。そして話も。
君:じゃ、頭に栄養与えないと、ね。わかるでしょ。
私:食事にお茶を、私がご馳走する。高くつきそう。話が逸れてない?
君:そうかしら?
私:・・・わかった。成り行き、成り行き、なんか変だ、な、けど、いいや、キミと食事出来て、お茶できるし。行こ。
君:やっとわかった、のね。遅すぎぃ。
私:そこまで言うかぁ?行こ、行こ。
君:ニコニコしてる、わよ。
私:人の心をそう明け透けに指摘するものじゃない、と思ぉよ。
君:そうでした?ごめんなさい。(歩き始めている)





安保氏はからだの絶妙なバランス保持のことを指摘しながらも、緩さと刺激との受け入れ方の工夫をずっと主張され続けていた。緩いだけでも体は不都合をきたす。きつすぎればもちろん痛む。でも刺激も好都合に機能させうる。
そこから強引にも遊びと人間知見連結してしまうなら、非合理とかなんとか見なしたくなるかもしれないけれど、理屈上のこととして、ヒトのふるまいは、明確に意識出来ではない場合でもその双方を求める動作に出てしまうことが起こるのだ、ということに気付かせる。そういうヒトへの謙虚な目線が必須だ。なにかをしでかしてしまう。予見話にしてしまうと映画マイノリティレポートの暗示してくれるやばやばな世の中運営の手法とも密接になりうる。そこらへのヒトならではの工夫がいつでも要る。




君:っていう探偵さんの見解?かしら。
私:わからなくなった。多分、ボクが、だと思う、けど・・・・。探偵氏がキミに惚れてしまうとなると、三角関係となって、ボクには不都合、だよ。
君:?!何言ってんの、よぉ。もぉ、どうしょもない、わよ。大丈夫?でも美味しい。この即時。
私:どっちへ答えたら・・・・。
君:混乱してる?
私:うん。探偵が今、食事してるのかも。キミの印象を食べ過ぎて、もうきょうはこれ以上食べられない、なんて苦しんでる。
君:喜べないわ、よ。それに三角関係にしたいわけ?
私:探偵氏、も、キミのハジケキャラの側面に圧倒されたらしい、と記述すべきかどうか。
君:なに、言ってるの。変よ。絶対、変。でも美味しい、わ、これ。お代わりしちゃおうかしら。
私:・・・・。
君:二人とも、絶句?・・・そぉなの?くっ、くっ、くっ、くっ、くっ。
私:止めよぉ、キミに惚れてるのはボクだけにしておこう。探偵はまずいよ。
君:私は初めから、あなたしか見えてなかった、わよ。探偵、ってどこにいるの?
私:先祖返りした時の細胞のふるまいはワイルドだし、相当に自前で生きてこうって感じだよな。
君:突然・・・それって探偵さん?
私:かも。きっと、そうだ、よ。
君:へぇーっ、でどうなるの、その先。
ということで続く。